コミュニティ・スクール制度化までの経緯

    主な経緯

 時 期  施   策  主  体  概        要
 平成12年
12月
 教育改革国民会議報告  教育改革国民会議  新しいタイプの学校として、コミュニティ・スクールの設置の促進を提言。
 平成13年
1 月
 21世紀教育新生プラン
(レインボー・プラン)
 文部科学省  新しいタイプの学校について検討することを決定。
 12月  規制改革の推進に関する第1 次答申  総合規制改革会議  コミュニティ・スクール導入のための実践研究の推進を提言。
平成14年
3月 
 規制改革推進3か年計画(改定)  閣議決定  コミュニティ・スクール導入のために実践研究の推進を決定。
 4月  「新しいタイプの学校運営の在り方に関する実践研究」開始(〜17年3月) 文部科学省   「保護者や地域住民が運営に参画する新しいタイプの学校運営の在り方」について研究。
 11月  構造改革特区第2次提案 地方公共団体等   コミュニティ・スクールの制度化について提案。
 12月  規制改革の推進に関する第2次答申  総合規制改革会議  コミュニティースクール導入のための制度整備の推進を提言。
 平成15年
3月
 規制改革推進3か年計画(再改定) 閣議決定   コミュニティースクール導入のための制度整備の推進を決定。
 5月  文部科学省大臣から中央教育審議会への諮問
「今後の初等中等教育改革の推進方策について」
文部科学省、
中央教育審議会 
 コミュニティ・スクールを含めた学校の管理運営の在り方について中央教育審議会に諮問、検討開始。
 6月  構造改革特区第3次提案  地方公共団体等  コミュニティ・スクールの制度化について提案。
11月   構造改革特区第4次提案  地方公共団体等 コミュニティ・スクールの制度化について提案。
 12月  中央教育審議会中間報告「今後の学校の管理運営の在り方について」  中央教育審議会  「地域学校(コミュニティ・スクール)について、その意義や制度の在り方について」報告。
 12月  規制改革の推進に関する第3次答申  総合規制改革会議  コミュニティースクールの法制化について提言。
平成16年
3月 
中央教育審議会答申「今後の学校の管理運営の在り方について」   中央教育審議会  地域運営学校(コミュニティースクール)について、その意義や制度の在り方について答申。
3月   第159回国会に地方教育行政の組織及び運営に関する法律(地教行法)改正案を提出  内閣  コミュニティースクールを設置可能とするため、法案を提出。
 3月  規制改革・民間開放推進3か年計画  閣議決定  コミュニティースクールの法制化について決定。
 6月  成立、公布    
 9月 施行     




   主な提言の内容(抜粋)


■教育改革国民会議報告(平成12年)

 新しい時代に新しい学校を

◎新しいタイプの学校(“コミュニティ・スクール”等)の設置を促進する
 新しいタイプの学校の設置を可能とし、多様な教育機会を提供する。新しい試みを促進し、起業家精神を持った人を学校教育に引き込むことにより、日本の教育界を活性化する必要がある。
(3)地域独自のニーズに基づき、地域が運営に参画する新しいタイプの公立学校
 (“コミュニティ・スクール”)を市町村が設置することの可能性を検討する。これは、市町村が校長を募集するとともに、有志による提案を市町村が審査して学校を設置するものである。校長はマネジメント・チームを任命し、教員採用権を持って学校経営を行う。学校経営とその成果のチェックは、市町村が学校ごとに設置する地域学校協議会が定期的に行う。



■規制改革推進3か年計画(再改訂)(平成15年)

コミュニティ・スクール導入に向けた制度整備(平成15年中に検討・結論)

 新しいタイプの公立学校であるコミュニティ・スクールを導入することの意義は、教職員人事を始めとする運営・管理及び教育の実施等について、学校、保護者、地域の独自性を確保する一方で、地元代表や保護者の代表を含む「地域学校協議会(仮称)」に対しアカウンタビリティを負うことにより、社会や地域住民・需要者のニーズに応じた多様で機動的な学校運営を可能とし、独創性と創造性に富んだ人材の育成に資することにある。これらの点を踏まえ、コミュニティ・スクール導入のための制度整備に関しては、例えばコミュニティ・スクールの設置手続、「地域学校協議会(仮称)」の設置と機能、都道府県教育委員会、市町村教育委員会及び地域学校協議会の教員任免等に係る権限の在り方等の点について、法令上の規定を設けることを検討する。

 



文部科学大臣諮問文 「今後の初等中等教育改革の推進方策について」(抄)

 第三は、学校の管理運営の在り方についてであります。学校の管理運営に関しては、株式会社等による学校設置、公立学校の民間委託、地域が学校運営などに参画するいわゆる「コミュニティ・スクール」の導入など様々な指摘がなされており、こうした指摘も含め、公教育としての学校の教育活動の確実な実施と充実を図る観点から、新しい時代にふさわしい学校の管理運営の在り方について御検討いただきたいと考えております。



■中央教育審議会答申「今後の学校の管理運営の在り方について」(平成16年)

第2章地域が参画する新しいタイプの公立学校運営の在り方について

1 地域が公立学校の運営に参画することの意義について
○ 我が国の公立学校の運営は,関係法令に基づき,教育委員会及び校長の権限と責任の下で行われている。こうした学校の運営の在り方は,学校運営に関する責任の所在を明確にするとともに,一定の教育条件・教育内容を確実かつ均等に保障する上で重要な役割を果たすものであるが,一方で,学校の運営の状況が保護者や地域住民等に分かりにくく,学校の閉鎖性や画一性などにつながりがちであるとの指摘もなされてきた。
○ 学校は地域社会を基盤として存在するものであり,充実した学校教育の実現には,学校・家庭・地域社会の連携・協力が不可欠である。
 これまでも,地域に開かれた信頼される学校づくりを目指して,全国の学校で様々な取組が進められてきた。例えば,平成12年に導入された学校評議員制度は,既に半数以上の学校で導入されている。また,学校側からの動きだけでなく,保護者や地域社会からの学校への働き掛けも活発化してきた。例えば,学校支援のための様々なボランティア活動などの取組も各地で進みつつある。
○ このような中で,近年,学校と地域社会との連携・協力を更に一段階進め,地域の力を学校運営そのものに生かすという発想が出てくるようになった。平成12年の教育改革国民会議報告においては,「新しいタイプの学校(“コミュニティ・スクール”等)の設置を促進する」という提言が行われ,文部科学省では,平成14年度から,モデル校を指定して,新しいタイプの学校運営の在り方に関する実践研究を実施している。
 また,政府の規制改革推進3か年計画(再改定)においては,「コミュニティ・スクール導入のための制度整備」に関して,法令上の規定を設けることについて平成15年中に検討し結論を出すことが決定されているところである。
○ 経済・社会の大きな構造改革の中で,可能な限り地方分権を進め,権限と責任を「現場」に近いところに移していこうとする流れが急速に進んでいる。また,従来は公的部門が単独で担ってきた分野についても,住民等に参画を求め,その力を生かすことによってより良い成果を実現していこうとする動きが顕著となりつつある。特に,文化活動や社会教育の分野においては,近年,各地で特色ある取組が見られるようになっている。公立学校の運営に保護者や地域住民の参画を求めることにより,学校を内部から改革しようという考え方は,このような社会全体の大きな改革の流れの中に位置付けられるものである。
○ 都市化の進行等に伴い,多くの地域でかつての地縁に基づく地域社会が変容し,「地域の学校」という考え方が次第に失われてきた。しかし,その一方で,保護者や地域住民の側に,自らが学校の運営に積極的に参画することによって,自分たちの力で学校をより良いものにしていこうとする意識が生まれつつある。こうした意識の高まりを的確に受け止め,学校と保護者や地域住民が力を合わせて学校の運営に取り組むことが可能となるような仕組みを構築していくことが求められている。
○ 各学校の運営に保護者や地域住民が参画することを通じて,学校の教育方針の決定や教育活動の実践に,地域のニーズを的確かつ機動的に反映させるとともに,地域ならではの創意や工夫を生かした特色ある学校づくりが進むことが期待される。学校においては,保護者や地域住民に対する説明責任の意識が高まり,また,保護者や地域住民においては,学校教育の成果について自分たち一人一人も責任を負っているという自覚と意識が高まるなどの効果も期待される。さらには,相互のコミュニケーションの活発化を通じた学校と地域との連携・協力の促進により,学校を核とした新しい地域社会づくりが広がっていくことも期待される。
○ 地域の参画による学校運営は,これまでの実践研究の成果等にも示されるとおり,現行においても,学校評議員制度など各種の制度の柔軟な活用によって,かなりの程度実現することが可能であり,今後ともすべての学校において,地域に開かれた学校づくりを目指した取組を推進することが求められる。
○ 一方で,例えば,学校評議員制度については,その意見を踏まえて教育内容の改善を行うなど,大きな成果を上げる学校があるものの,運用上の課題を抱え,必ずしも所期の成果を上げ得ない学校もある。また,学校評議員制度の,校長の求めに応じて意見を述べるという役割を超えて,より積極的に学校運営にかかわることができるような新たな仕組みを検討すべきとの指摘もある。
○ 今後,公立学校をより多様で魅力的なものとするためには,学校評議員制度に関する運用の改善を図るなど,これまでの取組を更に発展させることが必要である。開かれた学校づくりの原点として,保護者や地域住民が学校に対する様々な意見や要望を,幅広く,また気軽に相談できるような窓口を拡充していくことも重要であろう。
 併せて,こうした既存の枠組みを超えて,新たに保護者や地域住民が一定の権限と責任を持って主体的に学校運営に参加するとともに,学校の裁量権を拡大する仕組みを制度的に確立し,新しい学校運営の選択肢の一つとして提供することも必要と考える。今後,こうした新しい学校運営の在り方について更に詳細な制度設計を行った上で,明確な法令上の根拠を与える必要がある。

2 制度化に当たっての基本的な考え方について

(1)制度導入の対象
○ 保護者や地域住民が一定の権限を持って運営に参画する新しいタイプの公立学校(以下便宜上「地域運営学校」という。)に関する制度の導入の対象としては,地域とのつながりが特に深い小学校や中学校が中心になると考えられるが,地域の実情に応じ,学校を設置する地方公共団体の教育委員会の判断で,幼稚園や高等学校などを対象とすることも考えられる。
○ 地域運営学校は,学校運営の在り方の選択肢を拡大するための手段の一つとして新たに制度化すべきものである。したがって,その導入は,すべての公立学校に一律に求められるものではなく,地域の特色や学校の実態,保護者や地域住民の意向などを十分に踏まえて,学校を設置する地方公共団体の教育委員会の適切な判断により行われることとし,その指定の手続については教育委員会において定めることが適当である。

(2)基本的な制度の内容
ア 学校運営協議会の設置
○ 学校の運営への保護者や地域住民の参画を制度的に保障するための仕組みとして,教育委員会が,地域運営学校の運営について協議を行う組織(以下便宜上「学校運営協議会」という。)を設置することが必要と考えられる。
 学校運営協議会は合議制の機関であり,その委員としては,児童・生徒の保護者,地域住民のほか,当該学校を設置する地方公共団体の教育委員会が適当と考える者のうちから,当該教育委員会において任命することが適当である。委員の数,構成,委員の任命の手続,任期,学校運営協議会の議事に関する事項等については,教育委員会規則において定めることになると考えられる。なお,委員は非常勤の公務員に位置付けられるものと考えられるが,教育の中立性や公正性を確保する観点から,例えば学校運営協議会の委員の任命に当たり守秘義務を課すことなども検討されるべきである。

イ 学校運営協議会の役割
○ 学校運営協議会の役割としては,
(@)学校における基本的な方針について決定する機能,
(A)保護者や地域のニーズを反映する機能,
(B)学校の活動状況をチェックする機能
が考えられる。すなわち,学校運営協議会には,例えば,学校における教育課程編成の基本方針,予算執行や人事配置等に関する基本方針等,当該学校の運営の大綱について,校長等の提案に基づいて承認を行うなど,学校における基本的な意思決定に関与する役割を果たすことが期待される。校長は,承認された基本的な方針に基づき,学校運営の責任者として具体的な事項について決定し,校務を行うこととなる。このように,学校の基本方針の決定等に当たり,校長は学校運営協議会に対し十分な説明を行い,相互に意見交換を行うことが必要となるが,この過程を通じて,保護者や地域住民が自らも学校運営に共同責任を負っているとの自覚を深め,校長を中心とした具体的な学校運営の支援に積極的にかかわっていくことが期待される。
 また,学校運営協議会の委員には,保護者や地域住民を代表する立場にある者として,学校に対する保護者の要望や地域ニーズを公平・公正に,かつ,幅広く把握・集約し,学校運営に反映させることが求められる。さらに,基本的な方針に照らした学校の教育活動の実施状況について絶えず目を配り,評価を行い,必要があれば改善を求めるなどの働き掛けを行うことなども期待される。このような権限を有する学校運営協議会には,自らの活動に関して,保護者や地域住民,教職員等の学校関係者に対して説明を行う責任が生じる。また,当該学校において所期の教育目標が十分に達成されないなどの場合には,委員の解任や学校運営協議会の解散などの形でその責任が問われるものと考えられる。
○ 学校にどのような校長や教職員を得るかということは,地域の意向を踏まえた特色ある学校運営の成否に特に重要な影響を与える問題である。このため,実践研究校のこれまでの研究においても,校長を公募し,その選考に学校運営協議会が関与したり,教職員の人事について要望を行うなどの取組が試みられてきたところである。
 こうしたことを踏まえ,地域運営学校においては,現在の校長による意見具申や市町村教育委員会による内申に加えて,学校運営協議会が校長や教職員の人事について具体的に関与することができるようにするとともに,人事に関し最終的な権限を持つ教育委員会においては,地域運営学校制度の趣旨にかんがみ,校長や学校運営協議会の要望等を可能な限り実現するよう努める必要がある。このために,例えば,学校運営協議会が,教職員の公募を求めたり,任用の候補者について要望するなど,
学校運営協議会が人事について任命権を有する教育委員会に対して意見を述べることができ,当該教育委員会においては,その意見を尊重して人事を行うなどの仕組みを設けることが考えられる。この場合,市町村立小学校又は中学校の学校運営協議会においては,当該市町村教育委員会を経由して都道府県教育委員会に意見を述べることが適当と考えられる。なお,学校運営協議会から意見の申し出があった場合,市町村教育委員会は,地域運営学校制度の趣旨にかんがみ,特段の支障がない限り,その意見と同様の内申を行うこととなるものと考える。
○ また,市町村教育委員会が市町村立小学校又は中学校を地域運営学校に指定する場合,当該学校における教職員は県費負担教職員であることから,教職員の任命権者である都道府県教育委員会に対し事前に協議を行うなどの手続が必要と考えられる。
○ 保護者や地域住民に学校運営に当たっての一定の権限を与えること,すなわち,学校運営協議会に具体的にどのような権限を与えるか,その際,校長や教育委員会との関係をどのように位置付けるかなどについて法令上規定することは,現在の地方教育行政制度に全く新しい視点に立った仕組みを導入するものである。このため,その制度化に当たっては,教育委員会の自主的,主体的な取組が促進されるよう,地方教育行政全体の在り方にも照らしつつ,十分な検討を行う必要がある。

ウ 校長の裁量権の拡大等
○ 地域運営学校の運営をより効果的なものとするためには,学校の創意工夫を生かした様々な取組が可能となるよう,学校運営の責任者である校長の裁量権を拡大することが重要である。先に述べたように,教職員人事については,学校運営協議会の関与の下,学校の裁量権の拡大を図ることも必要であるが,これに加えて,例えば,地域運営学校の校長に係る裁量経費を増額することや,学校の判断に基づき非常勤講師の採用を可能にすることなど,現行制度の運用の改善等による対応が可能な事柄については,各学校の設置者において積極的な検討を行うことが求められる。
○ また,学校の裁量権が拡大するに伴い,校長には,学校を取り巻く地域の様々な関係者と十分なコミュニケーションを図り,相互の連携・協力を確保しつつ,学校の責任者としてリーダーシップを発揮する高い力量が一層強く求められることとなる。国や教育委員会においては,高度な専門性や経営能力など校長として求められる資質や能力の向上に向け,研修等の充実に取り組む必要がある。

(3)点検・評価等
○ 地域運営学校は,これまで行政内部で完結していた学校運営に保護者や地域住民が責任を持って参画するものである。地域運営学校が,公立学校として担うべき公共性や公平性・公正性を担保しつつ,その特色を生かした教育を実践していくためには,当該学校による自己評価が重要である。さらに,学校を設置する地方公共団体の教育委員会において,学校運営協議会の活動も含め,地域運営学校の教育活動を不断に点検・評価するとともに,その結果を例えばインターネット等を通じて情報公開し,その成果を他の学校の教育活動にも生かしていく必要がある。
○ 教育委員会が行う点検・評価においては,例えば,学校運営協議会が期待される機能を十分に果たしているか,公立学校としての公共性・公平性・中立性の確保や教育水準の維持等は適切に図られているか,地域の信頼に応える学校づくりに具体的な成果が上がっているかといった観点から,それぞれの地域運営学校の特色に応じた評価項目を定め,適切に実施していくことが求められる。その際,第三者による評価委員会等を設置し,その評価を参考にすることや,保護者や地域住民に広く意見を求めることなども有効であろう。点検・評価の結果によっては,地域運営学校に教育活動の改善を求めたり,その指定を取り消すなどの措置を講じる必要も生じるものと考えられる。
○ 地域運営学校の円滑な運営を実現し,所期の目的が達成されるよう,地域運営学校を設置する地方公共団体の教育委員会においては,あらかじめその指定や取消しに関する手続き等必要な事項を教育委員会規則において定めるとともに,地域運営学校の運営に関する調整や評価などを行う組織を明確にするなどの十分な体制整備を図ることなどが求められる。また,国においても,地域運営学校に関する情報の収集・提供や評価方法に関する研究開発等を通じて,新しいタイプの学校運営を積極的に支援していく必要がある。